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第14回西の湖ヨシ灯り展に思う
                                                                                                   ヨシキリ
                      今年はヨシ灯り展に際しまして、コロナウイルスの関係で行事が中止や縮小される中、開催できましたことは大
                    変嬉しく思っております。しかしオープニングセレモニーに際しましては、非常に厳しい自然の事象がヨシ灯り展に
                    対して、何かを暗示しているかのように感じました。また市長さんのお話の中で、コロナウイルスがこの雨で流され
                    てくれるでしょう、というお話を嬉しく聞かせてもらいました。
                      私はいつも、ヨシの自然との関わりをテーマに、「自然を大切にすれば自然にまもられる」と思ってきましたが、ま
                    さかこんな時に夕立が来るとはだれも思ってはいなかったでしょう。自然の厳しさを強く感じますとともに、皆様方に
                    謝意とご配慮に対しまして改めてお詫び申し上げます。
                       ヨシは4月に芽を出し、5月には葉っぱが両手を上げたように背伸びをしているような、生き生きとした美しい深
                    い緑の光景と、鳥のヨシキリがはげしい鳴き声で、刈残ったヨシの先に止まって、鳴いています。8月のお盆を過ぎ
                    るころには黄色い穂が出て成長はほとんど止まりますが、太いヨシは一年で4㍍以上に伸び、9月頃葛色の穂に変
                    わります。11月末ごろになると緑の葉も枯れてきて、小金色に変わっていきます。12月の末には北風に吹かれて
                    葉をもぎ取られてなお風に揺られながらも、凛として立っている冬のヨシ風景です。ヨシ刈りが始まります。3月には
                    ヨシ刈りが終わり、末にはヨシ焼が始まり、視界を遮っていたものがなくなり、焼け野原になります。黒色になりそこ
                    から新芽が出てきて一雨ごとにヨシが芽吹き、新緑に変わっていきます。琵琶湖八景の一つ「春色安土八幡の水
                    郷」です。
                      滋賀県が平成3年に、琵琶湖の水辺の環境を守るために「ヨシ」を取り上げて、「ヨシ群落保全条例」をつくってヨ
                    シ群落を増やし、冬に刈り取り・火入れ・清掃などの維持管理をするようにしました。
                      そこで平成4年から「ボランティアのヨシ刈り」を15年続けましたが、刈り取っても活用しなければ、刈り取った意
                    味がないのです。
                      それで平成19年から「西の湖ヨシ灯り展」を立ち上げました。今年で14回目になりました。ヨシの利活用を目的に
                    ヨシを使うことで商品開発に繋げて、活用が刈り取り・火入れ管理・ヨシ地の生息域保全になります。
                      「西の湖ヨシ灯り展」は子供の頃からヨシを触り、個性ある作品を作り、ヨシを知り、勉強して環境を考え、自然に
                    親しむことで、大人になったとき、こんな使い方をしてはと、ふと思う・・・・・・。先祖が残してくれた西の湖の美しい風
                    景を、次の世代に引き継いでもらうためにも、ヨシの利活用・光明を目的に、新しい使い方を提案・アイディアの活
                    用をしていきたいと思っています。
                      昨年第13回は、大きなヒンメリ作品が出て来ましたが、それと10回目の時、球面体の丸い作品が出ていたのを
                    思い出して、組み合わせて作ってもらったのです。新しい形を考えて、「八十丸キット」を商品化しましたが、こうした
                    取り組みも皆さんのアイディアをいただいて出来てきたもので、このような発展ができればいいのではと考えます。
                      ヨシは太陽が育ててくれた贈り物です。我々人間が刈り取り・焼き払いに関わることで、自然のサイクルが回り、元
                    気なヨシが育ち、大切な自然環境3要素(水・土・空気)が浄化されるのです。刈り取ったヨシの活用で、生息域・環
                    境保全につながっています。又ヨシの群落は、気候の安定と小動物の隠れ場として、食物連鎖などで浄化の役割
                    を果たしています。
                      西の湖は琵琶湖のモデル湖で、ヨシ群落の割合が琵琶湖より非常に大きくて、ラムサール条約にも入っている代
                    表的な湖なのです。ヨシ群落の自然の力を最大限に生かし、美しい琵琶湖を取り戻すために、西の湖から進めて
                    いき、ヨシも水も環境が良くなることで、琵琶湖が元の美しさを取り戻し、淀川水系の下流府県1400万人の生活用
                    水に、きれいな水を提供できることを望んでいます。
                      時代とともに水辺の風景は大きく変化してきました。しかしこれまで先人たちが残してくれた風景は、大きく変え
                    ることなく、ヨシが冬の北風に揺らされながらも、凛と立っているような変わらない風景を残していきたいと思いま
                    す。
                             令和2年10月8日                   葭  留           竹  田  勝  博












                     竹田さんと画家のブライアンさんご夫婦                                          八十丸キット           (ヨシ紙入り)




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